向上するから継続する。秋は23ステップで、ピアノを弾こう!
ピティナ・ピアノステップの参加方法は二つ。23ステップとフリーステップです。
過去20年にわたり、フリーステップでの参加率は徐々に上昇しており、2017年度は47.2%。
さらにコンペティションのリハーサル需要が多い春・夏は、フリーの比率がむしろ23ステップよりも大きくなります(2018年は53.6%でした)。
今回の記事では、そんな中で今一度23ステップの重要性を振り返ってみたいと思います。フリーステップが、自由なステージで「継続するから向上する」ならば、23ステップは、課題をこなすことで、いわば「向上するから継続する」、ではないでしょうか。ステップ史上、実に6割以上の方(125,000人以上)が、23ステップのみでの参加、となっています。
秋・冬のステップ参加の前に、ぜひご一読下さい!
23ステップは、導入1から始まり、展開3で終わる23段階でピアノ学習を応援するシステムです。課題曲1曲+自由曲1曲、計2曲を演奏し、それぞれの曲に対して、3人のアドバイザーから「S・A・B・C・D」の5段階評価を受けとります(パスポートには6つの評価シールが貼られます)。
23ステップ(段階)に分かれた課題曲の中から、1曲目を、次に、各ステップ毎に設定されている規定時間内におさまる曲を自由曲として1曲選びます。自由曲の条件は下記の通りです。
- 市販されているピアノ譜から選んでください。
- 参加者は必ずピアノを演奏してください。
- 課題曲一覧の曲を自由曲として選択可能。参加するステップより、上のステップからも下のステップからも選択が可能です。
- ソナチネ・ソナタ等の楽章抜粋、組曲からの抜粋は1 曲としてカウントします(一楽章で1曲扱いです)。参加者の判断で抜粋やカット、編曲はできません。
- ステップ自由曲の規定時間(市販されているピアノ譜)
導入1~導入3 | 1分以内の曲 |
基礎1~基礎3 | 1分半以内の曲 |
基礎4~基礎5 | 2分以内の曲 |
応用1~応用4 | 3分以内の曲 |
応用5~応用7 | 4分以内の曲 |
発展1~発展3 | 課題曲とあわせて2曲で8分以内の曲 |
発展4~発展5 | 課題曲とあわせて2曲で10分以内の曲 |
展開1~展開3 | 課題曲とあわせて2曲で12分以内の曲 |
演奏順番は、①課題曲→②自由曲です。申込書にもその順番でご記入ください。
演奏の時は、楽譜を見ても結構です。(ただし暗譜は評価対象の一部です)
自由曲は、規定時間内であれば繰り返しは自由です。
評価がつく目安は下記の通りです。展開1~3まで終わったとき、ピアノ演奏において、国語や数学を高校の課程まで修了したくらいのレベルを想定しており、音大受験にも対応できます。
S | 参加者の方がその時点で最高の演奏をしただろうと思われたとき |
---|---|
A | 練習した成果がよく発揮され、音楽として感動できたとき |
B | 基準となる評価で、そのステップにおいて十分合格レベルに達していると思われたとき |
C | 足りない部分があると感じられたとき |
D | もう一度同じステップにチャレンジしてほしいとき |
ステップが、20でも24でも30でもなく、一見中途半端な23になったのは、理由があり、段階を多すぎず、少なすぎず、と追及した結果でした。
初歩の段階は、あまり多くなく、すぐ次に行けるのがよいのでは、と3つくらいに課題を分類。次に、(基礎、応用)くらいになると、本当は9段階、10段階あってもよいくらいであるところですが、「上に到達しない」難しいイメージを避け、7つまで、という数字の感覚にこだわりました。
段階の名称ですが、「初級」「中級」「上級」は一方向的で戻ってこれない感じがあり、また、外来語は使わないと決めて、名称を「導入」「基礎」「応用」「発展」「展開」に。展開→発展という順序も候補にあがりましたが、語呂合わせもあって今の順序に。縁起のよい数としての奇数と対称性にこだわり、3,5,7,5,3に区切って、これを合計したのが「23」ステップでした。
先ほどの通り、5段階や7段階では足りないということがあると思います。その場合は2度受けることはもちろん、階段の「踊り場」的に、フリーステップを間に挟むことが有効です。
課題曲のレベル設定については、長年にわたり現場からのフィードバックと改訂を繰り返しています。まさに、ピティナ会員の知恵と経験の結晶です。
23ステップは、「早くすすめばよい」というものではなく、「余裕をもって」登るようにしていただきたいと思っています。「余裕」があるかどうかは、先生の見極めが大事ですが、一般に、課題曲の中心である教則本・練習曲に対するアドバイザーの評価は、いわゆる自由曲に比べればブレが小さいはずです。そこで、アドバイザーの評価に基準を置きながらも、やはり日々の生徒を知る、指導者自身が適切に「どのステップで参加するか」、フリーステップも上手に使いながら、判断してほしいと思います。
「23ステップに従って練習し、積み重ねていくのは、勉強と同じ」と明確に語る松本尚樹さん。それぞれがこの春までに「継続表彰35回」を受賞、すっかりピアノを生涯の趣味として楽しめるようになった同じ高校に通う3人ですが、その「ステップ履歴」は、はっきり「23ステップ」が中心になっており、各段階を丁寧に一つずつ修了しています。指導者の高橋悦先(熊谷さくらステーション代表)のご自宅で、ピアノも学校生活も充実の様子の3人にお話を伺うことができました。
23ステップを丁寧に順番に受けてきたのは、ひとつひとつ、できる限り完璧にしていきたかった、というのはあるかもしれません。
BとかCがつくと悔しいから、飛び級するのに抵抗もあったし。もし飛ばしてしまったら、そこで新たなテクニックが抜け落ちてしまうのではないかという意味でも、抵抗があります。
進んで行くと、ぶつかる壁はあるけど、無理はしませんでした。あまり高望みもしていないんですが...。評価も山あり谷ありです。でもB・B・Bだったら、次はA・A・Aにしてやる!と思うだけですし(笑)。
自分に何が足りないかが分かれば、次の練習に活かせるし、そういういい循環ができるようになるには、やはり継続、経験の数がものを言うのだと思います。
私たちの場合は、二人で講評を見せ合って、刺激しあったり、それをタネに楽しんだりできたのも、幸運でした。
指導者の高橋悦先生が、課題曲から2、3曲選んで下さり、コンクールで頑張っているあこがれの先輩が弾いている曲などを特に意識して、取り組みました。
私の場合、コンクールで大きな賞を取りたい、ステップではSをもらいたい、という気持ちが強く、発表するステージがあれば、自然に練習が多くなるので、その積み重ねでここまで来れたと思います。高校受験でもピアノをやめませんでした。
ステージで弾き終わったとき、「思い切り弾けた、良かった!」と思えたときは、きっと評価も良いので、交付用封筒を開けて評価を見るのが楽しみです。もし、仮に評価が低かったとしても、そこまで練習をして講評を読めば、何が自分に足りなかったかわかります。
ステップの会場で、自分がかつて弾いた、同じ23ステップの課題曲を弾いている年下の子がいると、頑張ったねと声をかけてあげます。私も、先輩からそうやって声をかけてもらってきましたので。
23ステップは、順番に受けるのだろう、くらいに思っていました。中学生がいきなり大学受験するのは難しいのと同じようなもので。
ステップに参加していると、耳にする曲が多くなるので、弾きたい曲も増えるし、だんだん譜読み力もついて、趣味として楽しくなっていきました。朝、ピアノを練習してからのほうが勉強もはかどります。
23ステップの、それぞれの段階の課題を弾きこんで、自分を追い込むほど、自分に何が足りなかったかが分かってくるようになっている。ステップの級を飛ばすと何が足りないかわからなくなるかもしれません。
勉強が、ずっと長年の積み重ねであるのとまったく同じように、23ステップも積み重ねなのだと思います。
最初の23ステップ参加は幼稚園の時、導入3からでした。
お姉さんである玲於奈さんの背中を追って、階段の最後、展開3まで全部登りきろう!とスタートを切りました。
自分から進んで練習するタイプではありませんでしたが、明確な5段階「評価」があり、かつ、自由曲で新しい世界と出会える楽しさもあり、徐々に、毎年3回くらいのペースに。
BやCの評価には、落ち込むこともありましたが、昨年、応用・発展・展開の全段階を含む19ステップを修了!展開3はお姉さんよりも早い中学1年生での参加で、見事に「S」評価だったとのことです。
23ステップは、評価が分かりやすく、目標が立てやすいです。選曲は、その時の好きな曲、弾きたい曲を最優先にしています。ですので、レベルも進んだり戻ったりします。
(実際に、応用1→2→3→5→3→4→6→7→1→2→4・・・という参加の仕方をしています)
目標にしているステップレベルは、あまり考えたことはありませんでした。ピアノを続けていけば自然に選曲もレベルが上がってくるのだと思いますし、そうすると、ステップレベルも自然に上がっていく時が、いずれ来るんではないかなと思います。
今後弾きたい曲、弾いて欲しい曲は沢山ありますが、ステップの課題曲の中で目標にしている曲はありません。
それとフリーステップは、コンクールや演奏会で弾きたい曲が、23ステップの課題曲になかったり、3曲演奏するときなどに活用しています。
子供というのは単純なので、例えば、「前回より1つでもSを増やす」ことを目標にします。最近では、オールSを毎回目標にしていますよ。オールSは取ったことがありませんので!
※お母様へのインタビューです
毎年、その級の中でいちばん難しい曲で出ています。練習は大変だけど、弾けると楽しくなって、またもっと難しい曲で出ようっていう気持ちになります。毎年そうやってステップに参加しているので、ステップでレベルアップしているという実感があります。
難しい曲で参加し始めたきっかけは、最初は先生が課題曲の中から何曲か弾いてくれて、その中から好きだなって思う曲を選んでいました。その結果、選んだ曲がいちばん難しい曲だったんです(笑)
好きな雰囲気の曲ですが、クレッシェンド/ディミ二エンドがすごくあるというか、強弱が激しい曲が好きだなと思います。先生は、私がどんな曲が好きなのか分かってくれているので、課題曲や自由曲は好きそうな曲を提案してくれます。組み合わせについては、例えば課題曲は明るい曲、自由曲は静かな曲とか少し雰囲気を変えるようにしています。
私が選ぶ課題曲はいつも難しいのですが、先生は「難しいよ、でもまあ、大丈夫。頑張ろう」っていつも、的確に教えてくださいます。
私は、例えば「発展までやりたい」っていう感じじゃなくて、自分の中でいつか弾きたい曲があって、最終的に弾きたい曲は、ショパンの「黒鍵」なんですが、そのためにステップを使ってレベルアップしている感じです。
ピアノをやめようと思ったことはないです。楽しいからです。挑戦する曲はいつも難しく、練習していて嫌だなと思うこともあるけれど、弾けたら気分が乗ってきて楽しくなるからです。
ステップは、日本全国、いつでもどこでも、開催しています。開催をし続けることによって、参加者と参加者、指導者と指導者が、その時々で何かに気づき合い、次の学びのアクションをとることができます。こうして、ステップ自体が「教育の場」として機能しています。指導者、学習者の皆様のご参加をお待ちしております。