あなたもきっと好きになる アドバイザーの想いを紐解く
みなさんは何を楽しみにステップに参加しますか?普段は触る機会がないグランドピアノを弾けることでしょうか。自宅や教室とは違った会場に足を運ぶことも、お友達からコミュニケーションカードがもらえることも魅力的ですね。しかし、ステップを語る上で欠かせないのが「アドバイザー」の存在です。コンクールより広い参加の形を歓迎するステップ。そしてその現場を支える、ちょっと特殊な役割。先生方はどのような想いでステップアドバイザーという「お仕事」に向き合っているのでしょうか。
誰もが参加できるステージ・・・それはどんな参加者にも対応できるアドバイザーの存在があってこそ成り立っています。年齢は0歳~90歳、レベルは趣味でピアノを続ける人から受験生、ピアノの指導者まで。さらに最近はピアノ以外の楽器や合唱での参加も数多く見られます。たとえどのような形の参加であっても、今までの指導や演奏活動の見地から音楽を続ける人への温かいメッセージを送ることを心掛けてくれています。
ステップ当日を迎える前に、たとえばこんな準備をしています。
-
プログラムを読んで、知らない曲は下調べしています。
-
セミナーに積極的に参加してコメントを書くときの「引きだし」を増やしています。
-
ステップで演奏される曲を実際に弾いてみています。
一日最大で100枚ものメッセージを書くこともあるお仕事。手が疲れにくいペンや滑らかに書ける鉛筆などこだわりの逸品がある先生も・・・!
ご紹介した内容はアドバイザーの先生たちから聞こえてくる声のほんの一部です。このようにたくさんの準備と時間をかけながらも、「ステップは楽しい!」「多くの人たちの継続を後押ししたい」という気持ちで毎週末、全国各地へ飛び回っているのです。
ステップのメッセージ用紙は評価だけではなく、アドバイザーが書いてくれた「メッセージ」に大きな価値があります。2016年9月現在、ステップ・アドバイザーとして活躍している先生は709名。一度に全員のことをご紹介はできませんが、まず今回は4名の先生をご紹介します。
ステップのメッセージや講評の根幹にある先生たちの考え方をぜひ知ってほしいと願っています。
おかだ まき◎桐朋女子高等学校音楽科(共学)を経て桐朋学園大学音楽学部卒業。ピアノ科卒業演奏会に出演。パリ国立地方音楽院(現CRR de Paris)最高等課程を審査員満場一致の最優秀の成績で卒業。国内外のコンクールで優秀な成績をおさめる。田崎悦子主催ピアノマスタークラス「Joy of Music」アシスタント。ソロ、ま た室内楽、コンチェルトのソリストとして著名な音楽家と共演多数。京都光華女子大学非常勤師。
九州は昔1度コンクールを受けに訪れたことしかなかったので、今回そこに住む人たちときちんと交流を持つことができたことを嬉しく思いました。スタッフの先生方のおもてなしの気持ちや、ステージに上がる方々への拍手からは、会場一体となって特別な一日にしようという思いがひしひしと伝わってきました。地域ごとに個性があり、人間的な触れ合いがある、これはステップならではの良さだと改めて実感しました。
自分の生徒を見ていると、どうしてもメッセージ用紙に書かれている言葉をストレートに捉えている子が多くいます。こうした方が良いですよ、という指摘を見つければ自分の演奏がダメだったのだと落ち込む子もいれば、一言褒め言葉があるだけで有頂天になったりする子もいます。小さい子ほど、指導者の先生や親御さんが翻訳をするように読み解いて、その場で一喜一憂するだけにならないようにしていただきたいな、と思います。
ひとくくりにアドバイザーといっても得意な分野も考え方も様々です。せっかく複数の観点からアドバイスを受け取れるのですから、客観的に自分の演奏を捉える機会にしてほしいです。私自身も、長期的な目でその人にとってプラスになるようなアドバイスをしていきたいと思っています。
相手が存在することで初めて気がつく部分は多々あります。ソロの演奏は極端な言い方ですが、自分ひとりが演奏すれば、曲が成立してしまいます。しかし相手がいればそこには必ず自分以外の音を聴くという作業が必須になってきます。また、音量のバランスやステージに立った時の相手との距離感、さらにはホール全体の聴こえ方、空間の広がりを意識するようになります。これもソロで演奏する際にも生きてくる発見でした。 そして、互いの持つ感性を持ち寄り、音楽を通して対話をしながら一つの作品を作り上げていくのはとても楽しい過程でもありますね。
えざき まさこ◎ 桐朋学園大学、ワルシャワショパンアカデミー研究科修了。95年ミロシ・マギン(パリ)、97年シマノフスキ(ポーランド)、98年サレルノ(イタリア)の各国際コンクール1位。チェコフィルハーモニー、モスクワ放送交響楽団、東京交響楽団等と共演。CD録音多数。2004年度第31回日本ショパン協会賞受賞。洗足学園大学准教授。
誰かに教えるという行為は、一方的に知識を授けているように見えて、実は指導する側も同時に新たな発見や学びがあるという恩恵を受けています。演奏しているときの感覚を言語化する行為は簡単ではありませんが、それによって初めて自分の考えや感覚が明確になることもあります。
音大で教えている生徒もレベル、持ち味は人それぞれです。その人に合わせて教えることを心掛けてはいますが、それでもなお思いもよらないことに悩んだり苦労したりしている人に出会うこともあります。一緒に悩みを解決しようとする過程でこちらが新たな「気づき」を教えてもらっている気持ちになります。このように生徒一人一人に寄り添って考えていく行為は、演奏とは全く違う神経を使うため刺激にもなります。
大学の私のクラスでは、生徒に年4回、人前で演奏する機会を与えています。なぜなら「自分が演奏する」ことと「誰かの演奏を聴く」ことの両輪があってこそ音楽的に成長できるからです。
腕利きのコックが良きも悪きもたくさん食べて舌が肥えているように、音楽も演奏を聴く経験を重ねることで耳が鍛えられます。すると、演奏の良し悪しが分かるようになり、音や作品の好みを自覚できるようになります。ときに自分の演奏スタイル作りを先生に委ねる人もいますが、それでは自分らしい音作りには繋がりません。他者の演奏に刺激されて生まれた「自分はこうなりたい」という欲求を大切にしていってほしいと思います。
ステップでも、ぜひ自分の演奏を終えたらアドバイザーになったつもりで他の人の演奏を聴いてみてください。
人前で初めて弾く曲を演奏するときは、誰しも緊張します。なぜなら予期せぬアクシデントやミスが起こるのが本番だからです。場数を踏むことが重要とよく言われますが、それは単に人前で演奏することに慣れるのではなく、演奏後に振り返って次に同じミスを犯さない対策を練るという点まで含んでいるのだと思います。自分の演奏をアドバイザーからのメッセージや録音を使って見直すこと、そして次のレッスンでは具体的に上手くいかなかった部分を取り上げて練習、研究していき、次の本番までに修正することまで行ってこそ「ステージ経験」の効果が十分に発揮されるのではないでしょうか。
次のチャンスがあるのはとても素敵なことです。私自身、学生時代はチャンスが1度だけのことが多かったので、2日後、1週間後にリベンジの機会が用意されているプロを羨ましく思っていました。間違う機会が与えられたことを喜び、受け止め、次に活かす気持ちを忘れないでください。
ふせ たけし◎国立音楽大学作曲学科卒。ヤマハ株式会社にて音楽ソフトの制作ディレクター、音楽コンサルタントなどを務め、フリーランスとして作・編曲家としても活動。(財)ヤマハより各種曲集を出版、テキストを執筆。音楽之友社よりピアノ曲集の出版など。
参加される方それぞれに、ピアノやピアノ音楽との幸せな関係を築いていらっしゃるように感じました。ピアノと演奏者の関わり方はそれぞれ違うと思います。オリジナルな関わり方を構築することで、居場所を見つけることができる。ピアノという楽器は大きな包容力をもっていると改めて思いました。
参加者へのメッセージを書く際には、自分はピアノの指導者ではなく、演奏される曲に初めて出会うことも多いので、時間のある限り細かく予習をしていくようにしています。その上で、もし自分がこの曲を書いた立場だとしたらどんな風に弾いて欲しいかを考えるようにしています。
神戸東ステップでは、オリジナル曲を弾いた参加者がおられました。自発的に「作曲してみたい」という気持になるということは、ピアノの楽器としての魅力に気が付き始めた証拠です。こんな音をだしてみたい、この音域であればこういうタッチで弾くと自分のイメージに合うかもしれないといった探究心を持つことは素敵なことです。しかし最終的には、作曲も演奏も自分の中に蓄積した創造性を表現する手段のひとつだと思っています。
自分の成果をステージ上で披露し、聴いてもらえるというのは特別な体験の場ですし、目標とすることでモチベーションを高めることも出来ると思います。そして何より、聴く立場ではなく演奏によって伝える立場で楽曲に接するというのは、音楽に対する姿勢をとても豊かにしてくれると思います。たとえば、奏者が美しいメロディーに浸り聴き手のような気持ちで演奏することと、聴く側が心地よいと感じる演奏はイコールではない、ということに気付くことができます。
うらかべ しんじ◎1969年生まれ。1985年都立芸術高校音楽科、作曲科に入学。1987年パリ国立高等音楽院に入学、和声・フーガ・伴奏科で1等賞を得る。ピアノをテオドール・パラスキヴェスコに師事、ヴェラ・ゴルノスタエヴァ、イェルク・デームスのマスタークラスに参加。1994年オルレアン20世紀音楽ピアノコンクールで優勝。現在は室内楽、伴奏を中心に活躍。'12年CD「水の戯れ~ラヴェルピアノ作品全集?」をリリース、好評を得ている。
ステップのトークコンサートでは大抵、実施事務局の先生から曲のリクエストやお話のテーマをいただいて決めています。東浦和地区では曲作り、アレンジの観点からお話してほしいというご希望といただいたので自作曲を混ぜたプログラムを、横浜夏季地区ではコンペティションの課題曲を含めました。
選曲をする際には自分が弾いて「あり」か「なし」か、という基準に従って判断を下しています。本番まで乗り切るための作品への思い入れや好みは大切ですが、個人の資質や印象は外から見た場合と内で信じている場合とで認識のズレが生じていることがあります。いくらその作品に情熱を注いでいたとしても聴いて下さる方が私に合っていない、面白くない演奏であると感じたのであれば、コンサートとして成功とは言えません。ある作品へのモチベーションとお客さんからの見え方を吟味しつつプログラムを考えています。
いつも本番で目指すのは「無」の境地です。(笑)練習のときにできていなかったのに、本番になって突然できるようになるということは殆どありません。準備してきたことを信じて、下手にかっこつけようとせず演奏することが大切ではないでしょうか。ありがたいことに、ピアニストは医師と違って多少失敗したところで誰かの命に直接影響を及ぼすことはありません。思い切って練習の成果を披露すれば良いと思います。
ステップでのトークコンサートの特徴は、作品をよくご存じの先生方や真剣に練習を積んできた参加者がお客さんの大半を占めている点です。中途半端な気持ちで演奏をしてはならないと気を引き締めて挑んでいます。
コンペティションの審査員として参加者から期待されているものは、「評価」です。評価とその点数をつけた理由を明示することだと考えています。 一方、ステップではそのステージ経験をどのように位置づけるかを決めるのは参加者本人です。アドバイザーができることは演奏家たちの芽を摘まないようにすることだと思います。参加者自身の演奏の良い点に気付いてもらうようなアドバイス、そして次の練習に繋がるよう課題となっている部分を1つ以上指摘したいと思っています。
地区 | 日程 | 会場 | 締切 |
---|---|---|---|
鹿嶋(茨城県) | 2016/10/16 | 鹿嶋勤労文化会館リハーサル室 |
|
奄美秋季(鹿児島県) | 2016/10/15 2016/10/16 |
奄美文化センター | |
栃木岩舟(栃木県) | 2016/11/23 | 栃木市岩舟文化会館 | 2016/10/17 |
筑西冬季(茨城県) | 2016/12/18 | 結城市民情報センター 多目的ホール | 2016/11/14 |
地区 | 日程 | 会場 | 締切 |
---|---|---|---|
博多南秋季(福岡県) | 2016/11/12 2016/11/13 |
福岡市男女共同参画推進センター・アミカス | 2016/10/10 |
橿原(奈良県) | 2016/11/13 | 奈良県橿原文化会館 小ホール | 2016/10/10 |
碧南秋季(愛知県) | 2016/11/26 2016/11/27 |
碧南市芸術文化ホール(エメラルドホール) | 2016/10/24 |
島原(長崎県) | 2016/12/18 | ハマユリックスホール | 2016/11/14 |
地区 | 日程 | 会場 | 締切 |
---|---|---|---|
甲府秋季(山梨) | 2016/11/12 2016/11/13 |
内藤楽器ハーモニーBOX | 2016/10/10 |
豊橋秋季(愛知) | 2016/11/20 | 穂の国とよはし芸術劇場「プラット」 アートスペース | 2016/10/17 |
伊丹秋季(兵庫) | 2016/11/26 | 伊丹市立文化会館(いたみホール)多目的ホール | 2016/10/24 |
伊東(静岡) | 2016/11/20 | 伊東市ひぐらし会館 | 2016/10/17 |
京都修学院(京都) | 2016/11/20 | アトリヱ・松田 | 2016/10/17 |
宗像I(福岡) | 2016/12/03 | 福津市文化会館(カメリアホール) | 2016/10/31 |
宗像II(福岡) | 2016/12/04 | 福津市文化会館(カメリアホール) | 2016/10/31 |
宇都宮東(栃木) | 2016/12/23 | カワイ楽器 宇都宮ショップ | 2016/11/21 |
山形12月(山形) | 2016/12/23 | 山形テルサ アプローズ | 2016/11/21 |