ピティナ・ピアノステップ

23ステップは教室活性化の処方箋~秋の全国開催情報~

23ステップは教室活性化の処方箋~秋の全国開催情報~

日本列島は、多くの小中学校でもうすぐ夏休みを迎えます。ピティナでは、夏のコンペティション本選、決勝大会を終了すると、秋はステップの最盛期!
9月~12月ですでに220もの地区で開催が決まっています。この夏休み、ぜひ毎年恒例の、あるいは初めてのステージへのチャレンジを計画してみませんか。

参加の仕方は、ご存じ「23ステップ」「フリーステップ」。夏季と秋季で比較してみましょう。夏季(昨年5~7月)は23ステップが47.2%と半数以下でしたが、秋季(同じく9~11月)は58.9%と6割を占めていました。昨年度、初めてステップに参加した教室に限定しても、6割以上が23ステップでの参加です。

<ステップ基礎知識>
23ステップ 導入1から展開3までの23段階、課題曲と自由曲の2曲を演奏。評価はSABCDの5段階、C以上で合格。
フリーステップ 「3分」から「15分」まで、出入り含めた時間で自由にプログラムが可能。合否判定はなく、「Bravo」「Great」「Fine」「Almost」の印象評価。

いずれも、継続表彰の対象であり、アドバイザー3人からびっしりと肉筆のメッセージがもらえます!


そこで、今回の記事では、秋のステップに参考にしていただくべく、「23ステップ」を最も多く指導されている全国の会員の中から5名にインタビューしてみました。

ステーション代表者より
福沢真理子先生(富士ステーション 代表)

富士地区 11月19日・20日
富士市交流プラザ 多目的ホールにて

生徒が変わる!教本の力を引き出す!ステップの魅力 私の教室では、継続表彰がみんなの憧れ、目標です。発表会は、どちらかというと、お祭り感覚で、ステップは試験という位置づけですね。だから、ステップは、とても「緊張する」のですが、アドバイザーにすごく褒めてもらえる、そのギャップで子どもたちにはステップに夢中になってしまうようです。

やはり子どもにとっては、「合格」がもらえるのでフリーではなく、23ステップに参加する動機が上回ります。「数字」があがっていく魅力、わかりやすさ、嬉しさってありますね。

私はバスティン・メソードを使っていますが、次のレベルの教本を与えても、そこまで難しいわけではなく、ある程度弾けてしまいます。そのときに、教本のおかげでそうなっているのですが、そのことは伏せておいて、「すごーい、◎◎ちゃんは基礎1だったのに、基礎2の曲が弾けちゃうじゃん!」と生徒をのせてしまいます。23ステップを活用するということは、教本を最大限に使いこなすことにもなるんです。

導入→基礎→応用くらいになり、順調にステップを上がり続けるのが難しくなると、フリーステップを使います。このころになると、年齢的にも「合格」かどうか、あまり関係なくなってきますし、ちょうどいいんです。

私の教室は、ステップに参加することで、子供たちが「自然に練習する」ように変わりました。アドバイザーに聞いていただき、ほめていたける、というだけで、こんなに意識が変わるものかと、驚いています。

高井まゆみ先生(おかざき☆きらりステーション 代表)

岡崎秋季地区 11月3日(木・祝)
岡崎市シビックセンターコンサートホール「コロネット」にて

ちゃんと進んでいることを実感できる23ステップ

導入、基礎の段階では、あまり課題曲=教則本にこだわらず、生徒が楽しく、すぐに弾ける曲を探しています。まずそうやって基礎作りをしてから、「応用1」くらいから方針がかわって、今度は「教則本、練習曲」の進度に合わせてステップを選択していきます。生徒にとって、フリーステップより、23ステップのほうが「ちゃんと進んでいる」ことを実感できるのがよいのではないでしょうか。

基礎の後半くらいになると、生徒の側から曲を選んでくるような自発性が育ってきます。モーツァルトのK.545のような憧れの曲、人気曲は、「発展1」まで待てないので、応用の段階で自由曲として弾き、もう1回発展1で選んで、同じ曲を2度学んでもらったこともあります。それぞれの段階に合わせたアドバイスをもらえるのもステップの魅力。

また、アドバイザーによって、さまざまな意見、評価がありますが、朝は眠たいという人もいるし、さわやかで気持ちいい、という人もいるわけで、かえって世界にはいろいろな解釈があることを教えられますよね。

教室の生徒にとっては、パスポートにシールの貼り忘れがあったりするだけで「ない!ない!」と大騒ぎ。みんなステップが大好きです。

中野昌子先生(上尾ステーション 代表)

上尾地区 12月18日(日)
イコス上尾にて

指導の総合的なスキルが要求される23ステップ

23ステップがあるおかげで、「次はどうする」「こうしたい」と、生徒との密なコミュニケーションの必要が生じます。その過程を経て、生徒が「相談できる相手」に成長してきます。時には、「飛び級したい」という意欲を引き出したり、それを表明してもらうようにもっていくことができます。

私の場合、選曲は、少し先のレベル、背伸びする課題を与えています。発表会は、選曲から本番まで3カ月程度ですが、ステップの場合も同じくらい、またはそれ以上かかることもあるため、指導者は、生徒の能力の成長のペースや、性格、クセをよく把握していなければ、適切な選曲をすることはできません。とくに最近は、自由曲にポップスを選びたい子供たちが多く、適切なレベルのアレンジを、楽しく弾いてもらうための準備や知識、丁寧な会話も必要です。

こういった意味で、23ステップは、ピアノ指導者としての総合的なスキルをあげるのに役立っているのではないかと思います。

多数の23ステップ参加者を指導されている会員
出口雅子先生(三重県在住/おもに桑名西地区に参加)
自信をつけさせることが目的。
そのために課題を与える時期、選曲を調整する

私はステップを知る前は、4小節や8小節の曲で人前で舞台に出るなんて・・・と思っていました。でも、アドバイザーからのコメントをいただき、そこにも指導すべきポイントが山のようにあるということを、再認識させられました。子どもたちが「合格」をあんなに嬉しいことと受け取るのも、新鮮な驚きでした。

教室の発表会では、少し背伸びをした選曲をしますが、ステップでは、私はその生徒の今の段階よりも、やや安心して弾けるレベルで参加させ、自信をつけてもらうやりかたをとっています。逆に私の中では、3カ月、4カ月前と早めに選曲をしておいて、その子の能力にあわせて、課題を与えるタイミングをずらしています。あまり早すぎると、間延びしてしまうということもありますし。また、自由曲のほうで難易度の調節をすることも可能です。

とにかく、ステージ本番で子どもが自信をもって力を出し切り、AとかSとか、良い評価がいただけるよう、サポートしています。「喜びの体験」をたくさん与えて、ピアノ以外のいろいろな場でも、力を発揮できる人に育ってもらいたいです。

前田かおり先生(鹿児島県在住/おもに奄美秋季地区に参加)
「この曲を弾きたい」という意欲を引き出すステップ

選曲をするときは、いつも生徒から希望を出してもらいます。まず「課題曲シート」でだいたいのレベルの選定をしてから、曲については「課題曲コードブック」を示して選びます。

教室ではステップ参加はいわば定例行事です。ですから、長年参加している先輩の生徒がいます。彼ら彼女らが、いつどのレベル、どの曲で参加したか、というのが教室として一種のスタンダードとなっていまして、参加する際の指針となっています。

それに奄美秋季のステップですと、舞台袖から舞台に出ていくのではなく、自分が演奏するまで、客席で待っているスタイルです。つまり自分が演奏することと、友達の演奏を聴くことが、セットになっています。人の演奏を聴く習慣があると、「自分がこういう曲を弾きたい」「次はこうしたい」という自発性や積極性が生まれてくるのだと思います。

アドバイザー派遣委員会 委員長の林苑子先生より
23ステップと教則本の使い方

導入、基礎の時期には、基本をしっかり身につけるため、教則は丁寧に進めます。楽譜が読めるようになり、音階が弾けて、左右の手が独立し、そろそろ様式の違う4期の曲に向かう頃(23ステップでは基礎の後半あたりでしょうか)、教則本の選択が指導の要になります。テクニックのために1冊、そしてソナチネ、インベンション、ロマン派や近現代の魅力的なレパートリーにつながる選曲を考えたいところです。

一方、この辺になると、生徒さんの能力やピアノにかける時間に、個人差が生まれます。指導者が描く、その子の未来像と現実のギャップに悩みますね。ここが先生の「工夫のしどころ」ではないでしょうか。短距離型、長距離型、いろいろなタイプがいます。同じ選曲のしかたでよいということにはなりません。

例えば、ブルグミュラー25の練習曲2番『アラベスク』は、ステップでも人気曲です。課題曲シートでわかるように、この曲集は基礎4から応用2のどこかで弾くのですが、意外に、曲集の後半の長い曲は弾けても、この2番をパーフェクトに弾けるとは限りません。指先の独立、拍感、調性感、フレーズ感・・・難しいですね!

テクニックの得意不得意は人それぞれです。どのステップがその子にふさわしいかは、先生がよくご存じですね。こう考えると、ある曲集を順番に学ぶのか、順序を変えるのか、いろいろなパターンがあります。スキップしてもOKです。プレ・インヴェンション、カバレフスキー、ギロック等、ほかにも弾きたい曲がいっぱいありますね。

23ステップを上手に使って、どの子にも「名曲が弾ける」というゴールを目指してもらいましょう。早く名曲にたどりつけば、その音楽が子どもの力を引っ張り出して、いつの間にか練習好きになると、私は信じております。

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